0 かつて、私は英雄と呼ばれた。そしてたくさんの人々の希望だった。 私はそれを望んだわけではない、英雄になどなりたくなかった。 私はただ、何かの役に立ちたかっただけなのだ。 その地位に酔いしれていたわけではない。ただ、人々を絶望から救いたかっただけなのだ。 しかし、たくさんの期待を背負い、数多の犠牲を払って、行き着いたのは暗い部屋の汚いベッドの上だった。 拷問され、両足を失った。右目は潰れて、左目の視力もだいぶ落ちた。 顔にはかつての面影などは微塵もない。左手はもう動かない。 そして唯一残った右手はベッドにくくりつけられ、私は固くかび臭いベッドに横たわっている。 それは全て自業自得なのだ。私に不満をいう資格などない。私はこうなることがわかっていて、そうしたのだから。 だから私は生きている限り続く拷問に耐えなくてはならない。 あの拷問から、三年と半年経つ。それにしても長いものだ。私には三年半が百年にも二百年にも感じられた。一体、あとどれだけ生きろというのだろう。 長すぎて、耐えられそうにもない。 それ故に、私は死を望んでしまうのだ。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |