13/14 喜んでもらえると思ったのに。抱きしめてもらえると思ってたのに。 昔に戻りたかった。また、この顔で笑いたかった。 それを望んでいるのだと思っていた。この顔とこの体があれば、なんでもできる気がしていた。 一生懸命頑張って、いろんなことを我慢して、汚いことして、たくさん殺して、ここまでやっと生きてきた。 その終焉がこうならば、何故今まで死ななかったのだろう。なんでくだらない賭けをしたんだろう。 死ねばよかったのに、死ななかった。こんな場所で、まだ、生ぬるい希望でも抱いていたのだろうか。 「エメザレ……」 エスラールは、私がなかなか起き上がらないことを心配してか、恐る恐る私に近づいてきた。 私は、堪えつつも溢れ出る涙を見られまいと、体を丸めた。 「もういいよ」 「泣いてるのか?」 その声は優しかった。あまりにも優しすぎて、余計に涙が噴き出してくる。 「……ごめん」 彼は低くそう言うと、私の頭を撫でた。それから私を体ごと引き寄せて、せいいっぱい抱きしめた。 「変なこと言ってごめん。せっかく帰ってきてくれたのに。どうかしてたよ」 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |