1/14 「ヴィゼルが来たぞ」 ドア越しにエスラールが言った。 静かにドアが開いて、懐かしいヴィゼルの顔が入ってきた。 「久しいな。エメザレ」 久しぶりに会ったヴィゼルはだいぶ、男らしくなっていた。背は高くないが、それでも威厳の漂う顔立ちだ。落ち着いた雰囲気は、エスラールよりだいぶ年上に感じられる。 上等なコートに身を包んだヴィゼルは、まるでどこかの貴族のようだ。 「ええ。本当にお久しぶり」 「思ったより、君が変わってなくてよかったよ」 ヴィゼルは穏やかな顔つきで笑ってみせた。 「その辺にある椅子に勝手に座ってくれ。お茶でも入れてくるから、適当にくつろいでな」 「ああ、ありがとう」 エスラールがそう言うと、ヴィゼルは上品に会釈をした。 「もっと、近くにおいでよ。そこじゃ遠くて私の声がよく聞こえないでしょう。この頃はあまり大きな声が出せないから」 彼はベッドから少し離れた位置にある、テーブルの椅子を持ち上げると、私のすぐそばに置いて座ってくれた。 「だいぶ調子はいいみたいだな。顔色もいいし、元気そうだ」 「ヴィゼルのお陰だよ。ありがとう」 「いいんだよ。お礼なんて。照れるからやめてくれ」 ほんの少し頬を赤く染めて、気恥ずかしそうに笑った。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |