2/5


「お前の死にふさわしい場所だろう?」

「そうだな」

 と答えたが、心の底では寂しかった。
 偉大王はこの花畑でアンヴァルクに看取られるのだ。自国を愛し、民を愛し、言うなれば悪の女王アシディアから世界を救った偉大王は、誰も来ない花畑で、心のないアンヴァルクを一体そばに置いて、誰かに悲しまれることもなく、死を悟られることのないようにと、静かに死んでいく。これが数万年の人生の終焉なのだ。

「お前が、悲しいと思っているがわかる」

 リアスは呟いた。

「……ああ」

 もう否定はしなかった。もうすぐ死ぬ。嘘などついても仕方がない。元よりリアスはアンヴァルクなのだ。気を使う必要などない。

「私がアンヴァルクだから、心がないから、私に看取られても悲しいだけだと思っている。最後にそばにいるのが、愛する人ではなくアンヴァルクで、お前は虚しいと思っている。そうだろう?」

「そうだよ。お前の言うとおり」

「私は……お前の友ではないのか?」

 アンヴァルクはヴェーネンのように悲しい顔をした。
 そんな顔をしなければ彼の心はもっとずっと穏やかだったに違いない。他のアンヴァルクのように無慈悲で理性的で、感情とは無縁で残酷なほどに冷静だったなら、こんなにも心がかき乱されることはなかった。

「お前はアンヴァルクだ。リアス。友情なんてものは理解できない。いくらお前が望んでもヴェーネンのようにはなれないだろう」

「私はお前を友人だと思っている。私はお前達を理解したい。共感したい。一緒に楽しんだり悲しんだりしたい。確かに私に心はないが、だがそれでも分かち合いたいと思っている。それは間違っているか?」

「間違いではないが、どうやって心のない相手と真の友情を築けと言うんだ。心情が理解し合えない以前にお前には心がないんだろう」

「だが、ヴェーネン同士でも完全に分かち合っているわけではない。上辺はそうできても、腹の底で何を考えているかわからないのではないか? ことによれば憎しみや殺意を抱いているかもしれない。しかし、それが知られなければ、えてして友情は成立する。ならばお前と親しくなりたいと言っている事実以外に、否定的な意図はないのが確実な我々アンヴァルクの方が、よほど無害な友情を築けると思わないか」

 なんとアンヴァルクらしい冷たい言葉だろう。しかし誤っているわけではない。ただ数式の解のように整っていて、それが数字ではないものにも容赦がないのだ。

- 25 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む


モドルTOP