悪の終


クウェージアの首都から一歩出れば、そこにはムーリングの大森林が広がっている。
太古の昔から森に鎮座する木々は猛々しく、白い都市の儚さとは打って変わって洗練された厳しい印象を与えた。
都市の境界門からは石で舗装された道がまっすぐに遥か遠くまで伸びている。深くくっきりと刻み付けられたわだちは、いかにこの道が長く使われてきたのかを物語っていた。

フォスガンティが奇妙な短い笛を何度か吹くと、太い幹と幹の間になんとか押し込めて隠しておいたらしい、商業仕様の大型馬車が大森林の隙間からゆっくりと姿を現した。
御者はシクアスである。浅黒い肌にふっくらした小柄な体格と短い足で地面に降り立つと二人に一礼した。御者は少年にしか見えないが、おそらくもう中年であるだろう。シクアスの年齢を言い当てるのにエクアフの感覚は役に立たない。

「無駄に大型の商用馬車だな」

呆れ果てたようにジヴェーダはまじまじと馬車を眺めて言った。

「お荷物が相当多いのではないかと思いまして……。本来ならばもっとジヴェーダ様にふさわしい馬車でお迎えすべきなのですが、クウェージアはラルグイム経由の立ち入りを商用馬車以外は許可していませんので……貨物用で申し訳ありません。これでも苦労して来たのです。ですが中はきれいですよ」

御者がかしこまりながら馬車の戸を開けると、確かに中は汚い貨物置場ではなく、豪華な絨毯が広くひかれそれなりに快適な生活が送れるようになっていた。


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