悪の終


クウェージアの国境付近に差しかかると、御者は片言のエクアフ語で「クウェージアは入るの大変!出るのは簡単簡単!」とジヴェーダに言った。
全く恥ずかしいくらいにその通りで、クウェージアを抜けるのは野原を駆け抜けるかのごとくに簡単だった。小さな関所らしきものはあったが、入国する馬車ばかりを気にして、出国の馬車は止められもしなかった。

それから五日、御者と馬を変える以外はほとんど休みなく馬車は走り続けた。途中、悪路のひどい揺れで香りのきつい酒が二本割れ、しばらく車内に独特の香りとアルコール臭が立ち込めたおかげで気分が――というより機嫌が悪くなったこと以外はそれなりに文句のない旅だった。

「ベイネの都市に入りました! ラルダ・シジのところまでもう少しです」

フォスガンティいわく、馬車に「大亜ラルグイム貿易」のロゴが入っていて、ラルダ・シジの家紋旗をなびかせているため、らしいのだがベイネの関所でも止まることなくそのまま通過することができた。

- 32 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む


モドルTOP