悪の終


けれどもそこには、なんの喜びもなかった。不思議なくらいになにもない。むしろ怒りがこみ上げてきた。

それがなぜなのか彼にはよくわからなかったが、ただ、もし彼がこの地で生まれ育っていれば、彼は無駄に人生を捨てることも心を殺すことも邪悪にもならずに済み、罪悪感に苛まれることもなく、自分に疑問を感じることもなく、真っ直ぐに生きることができたのだ。
しかし哀れ、彼の硬くなった脳が価値観の変革を受け入れるのは不可能であった。

その時、彼の足元に誰が投げたか知れない花が落ちてきた。美しく可憐な花。彼はかつて「奴ら」が母の植えた花を踏みにじったように、それを踏みにじった。哀れな花の残骸を見つめて下を向けば、枯れ果てたはずの瞳からほとばしるものが溢れて花の上に二滴落ちた。

彼は死んだ。ラルグイムに邪悪なる拷問師ジヴェーダはもういない。ラルグイムの大愚なる民衆によって滅ぼされ、今は輝く新ヒーローが喝采を浴びて立っている。

「黙れ、クソども!」

彼は虚しくなって大声で叫んだが、称賛の嵐で無残にも打ち消された。
ああ、神よ。どうかこの陋劣なる彼らが宇宙からきれいに消え去りますように。
かつての少年が息を吹き返したかのように、ラルグイムの新ヒーロージヴェーダは深く、彼らの遥か遠くに輝く神に向かって祈りを捧げた。


悪の終

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