悪の終


エメザレの胸糞悪い中途半端な恩情だか根性だかのお陰で、スミジリアンの王と同盟を結ぶことに成功し、有難くも全ての白い髪は路頭に迷うことなくスミジリアンの一地区に住むことが簡単に許可された。
おそらく革命前から話はついていたのだろう。ついでに言うならば灰色の髪もそこに住むことを許された。
スミジリアンにおいて白い髪と灰色髪は平等である。しかし四百年、自らが頂点と信じ君臨し続けてきたクウェージアの白い髪が灰色髪と今更平等になど暮らせるだろうか。むしろその扱いに不平を垂れ、白い髪と灰色髪の確執は一層深まることだろう。

追放の期限は二週間あったが、あと三日と迫っているのが今日である。
大貴族の大荷物といったら絶句するほどで、しかも強欲な彼らは皿一枚ペン一本残さずに運ぼうと試みていたので、どう見積もっても二週間で引越しを終えるのは不可能であり、哀れにも追い詰められて外で騒がしく使用人を慌てふためかせているのだ。

「ジヴェーダ様、よろしいですか?」

ドアを三度叩く音がして、それから若い女の声がした。
彼は現実に戻ることをいたく面倒に思ったが、無視すれば返って用が気になる性分であったことを思い出し、妙な覚悟を決めると仕方なく目を開けて現実を招き入れた。


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