悪の終


フォスガンティが馬車の木窓を開けると、輝く太陽の光が差し込み車内の暗がりを一掃した。長く窓を閉め切って外を見ていなかったせいなのか、クウェージアで見るよりずっと太陽は強く光を放っているように思えた。

ベイネは大都市らしく大通りは込み合っており、当たり前であるがクウェージアでは見かけることがまずないシクアス種族がそこかしこに歩いている。雑踏の中から頭二つ飛び出た巨人のようなダルテス種族もちらほらと見かけることができ、赤茶色を思わせる都市の中で浮いて白い色のものをよく見れば、それはエクアフの肌であった。

ベイネの都市では三種族が共に暮らしているらしい。クウェージアでは全く考えられないことだ。ジヴェーダは人ごみに巻き込まれ停滞する馬車の窓から呆然と赤茶色の都市を見つめた。

「今は大名艶道中の最中なので道が混んでます。ご覧になりたければ近づくこともできますが」

とフォスガンティは窓の外を指差した。見るとそこには雑踏の中にさらにひしめき合う人だかりがあったが、建物の密度か高いためなのかベイネの空気はよどんでおり、砂やほこりが薄く都市を包んでいるようで、遠くのものがよく見えない。
「大名艶道中?」
仕方なくジヴェーダはきいた。


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