悪の終


神学校を辞めたことを知った母は「どうして」と何度も口にして泣き崩れた。彼はそんな母に背を向けて家を出、結局それきり家に戻ることはなかった。

それは彼を本当の子のように愛してくれたバルダミアスを散々憎んで一度も父とも呼ばず、数え切れない恩を受けたことも忘れ、拷問師であることが重い罪であるかのように暴言を吐き、更には母の期待にも弟の応援にも応えることが出来ずに自分勝手に学校を辞めて、あろうことか嫌というほど完全否定してきた拷問師になろうとする自分の姿を恥ずかしく思い、卑下するあまりのことからだった。

よって彼は、家族のその後のことは一切知らない。というよりも意識的に避けて聞かないようにしていた。

ジヴェーダはバルダミアスの知人であったログという拷問師を訪ね、弟子にしてほしいと頼んだ。ログは気前のいいさっぱりした気質の男で、ジヴェーダがバルダミアスの息子も同然であると知ると二つ返事で承諾してくれた。
彼はログのもとで技術と知識を習得し十五歳のある日初めて人を鞭打った。
あえて自分を慰めるように表現するなら「それが運命だったから」といったところであろうか。


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