悪の終


けれどもジヴェーダはバルダミアスの拷問師という職業が許せなかった。
そのせいで家族は日夜嫌がらせに怯え、罵る言葉に耳を塞いでいるというのに、仕事で散々哀れな貧民に鞭を振るうわりには、心穏やかなのか腰抜けなのか、罵倒されてもなにもせずに黙りこくっている。
そんなバルダミアスを何度も譴責し、ただ非壊して情けなく思った。

そして日常からの解放を求め、なにかの優しさにすがり付きたかったジヴェーダが進んだのは神の道だった。「神学校に行きたい」と言った時もバルダミアスは笑って「好きにしろ」と言った。
しかし万人に平等であるはずのエルドの御許にすら灰色髪の居場所はなかった。彼は黒い髪の東方一派のエルド神学校に通ったが、そこでは黒い髪と灰色髪のクラスはわけられており、優秀者だけを選抜した特進クラスには灰色髪は入ることが出来ず、よって必然的に出世コースから外されるのだが、無事神官の見習いになれたとしても一生田舎の礼拝堂で貧乏に喘ぎながらこき使われるのが目に見えていた。

けれどもそのまやかしのような平等という言葉に、偽善者の吐く身のない綺麗事に、彼は見事にのめりこんで不可解にも救済され安息を手に入れることが出来た。
エルドに祈れるのならば、安らかな顔のエルド像の前で泣くことを許されるなら、彼はそれで救われ一生をエルドに尽くしたいと思っていた。


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