悪の終


「エクアフは決まってそう言いますね。男娼を汚いとも言います。ですがぼくはそう思いません。
ぼくには一晩十万キーツの価値があるんです。努力すれば努力するほどその値が上がります。持ち上げた賞賛なんかより、それはぼくの価値を正確に示してくれるのです。ぼくを必要とする人が多くなれば多くなるほど、毎晩のように列を作り、ぼくのために待ち、ぼくのために時間を割いて、ただのぼくに会いに来る。

ぼくが彼らを癒せないならば、なんの役にも立てていないのならば、彼らはぼくに二度と会いに来ることはなく、ぼくの価値はなくなってしまう。つまりぼくには抽象的な信用のない言葉より、正確な数値で自分を見つめている方が安心できるというだけです。

自分の価値を数値で――まして金で表してほしくないなら、ぼくとて無論その人に男娼の職を勧めたりはしませんよ。
それに、ぼくはそこらの神の教えを説いている有難い方々よりも、よほど万人を平等に愛して絶望から救済している自信があります」

フォスガンティはシクアスの眼力で、というよりも単ににらめ付けるようにして、それでも口元には微妙の笑みを湛え強く言った。
おそらく、彼がフォスガンティの立場であっても同じようなことを言っただろう。ただしそれは自分を庇い負け惜しみのようにしてだ。フォスガンティのように本当にそうは思わない。
それがシクアスとエクアフの根本の違いなのだろうか。だとすれば二つの種族がわかりあえる日は永遠に来ないように思える。


- 24 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む


モドルTOP