悪の終


「そんなにこれが大切なのか」

ジヴェーダは断りもなく膨らみに手を触れたが、フォスガンティは恥ずかしがるどころかより一層堂々と胸を張った。
触り心地は少々硬い。膨らみの中に球体のような異物感がある。持ち上げると丁度陰になる場所に小さな傷があった。

「もちろんですよ!この胸を手に入れるために、ぼくがどれだけ努力した事か……」

胸を触るジヴェーダの手ごと大切そうに包み込みこんで、フォスガンティはうっとりと言った。

「お前はどうして男娼になったんだ」

その質問にたいした意味はなかったが、ここまで純粋に誇られればその経緯が気になるものだ。

「誰かに必要とされたかったからです。そして自分に価値を見出したかったから、目立ちたかったから、憧れの目で見られたかったから、ですかね」
「毎晩、決まった金で自分を売るなど、とんだ安売りだと思わないのか? どのあたりに価値を見出したと言うんだ」

侮蔑的に、しかし彼らしく飄々とした口ぶりでそう聞くと、フォスガンティは突然身を起こし嬌笑を含む顔でジヴェーダを見下して口を開いた。


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