悪の終


「みんなぼくを見ていますね。いい気分です」

ジヴェーダの後に続くフォスガンティは、そう言って誇らしげにしていたが、ここはクウェージアの宮廷である。裸に臨時政府の制服を羽織り、その隙間から谷間を覗かせていれば、よほど目の悪い老人でもない限り凝視するに決まっている。

「気分がいいのはなによりだ」

ジヴェーダは適当に返した。
宮廷の皆々はフォスガンティを凝視し、そしてついでに隣の拷問師を見送った。皆々の眼差しから逃げるわけでもなくジヴェーダは悠々と――むしろ闊歩するようにして自由の広がる宮廷の出口に向かって歩を進めた。
この宮廷に彼の心を引き止めるものは何一つなかった。

フォスガンティの能弁を聞き流しつつ騒がしい街中を通り過ぎ、都市の果てにたどり着くと、彼は理由もなく振り返り冷徹な白い都市を立ち止まって見た。
鉛の雲を頂いて儚く幻想的に見えるその都市は相変わらずジヴェーダを見下すように無慈悲に聳え立っている。

「どうされたのです?」

フォスガンティはジヴェーダが見ている先を一緒に眺めながら聞いた。

「行くぞ」

もう来ることはない。来ることも望まない。
忙しない街中に背を向けて彼は歩き出した。


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