悪の終


やっとベッドから抜け出した彼は、寝起きのゆらめきをまといながら鏡の前に立ち何を着るべきかと悩んだ。なんでもなければおそらくガウンのまま客を迎えたことだろう。しかし今日の場合は着ている服がそのまま死装束となる可能性を含んでいる。
死ぬ時くらいは着たい服を着て死にたいものだ。

ジヴェーダはクローゼットを勢いよく開けた。
前面には白い服が連なり一枚の紙を入れる隙間もないほどに押し詰められていたが、その白い服を全て引っ張り出し床に投げ捨てた。どれもこれも美しい、ただの白に見えてよく見れば細かい刺繍が施してある、それは高級な服であるがそれは自分の最後を飾るのにふさわしくない。

彼は奥の奥にしまい込んでいた瑠璃色のシャツを引っ張った。
クウェージアではかなり珍しい色の服だ。ずいぶん昔に馴染みのある商人にシクアス種族の国から買い付けさせたもので、床に投げ捨てた一番高い白い服より十倍近く値が張る。それを手に入れたときの喜びを覚えているが、問題は白い服以外の着用が宮廷で認められていないということだった。
かしこまって外に行く用もそうはない。結局一度も着ないまま奥の奥へと押しやられた。彼は迷いもなくそれを着込み、黒の下をはいた。靴はモート種族が履く高級蛇の長いブーツにした。

満足して鏡の前に立ったジヴェーダは、ふいに彼らしさを取り戻し鏡の中の自分を笑った。


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