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エスラールと別れてから何か月かたったある日、珍しい訪問者がやってきた。
あの血判入りの嘆願書の最後に名前があった、かつての親友、ヴィゼルだった。

「やぁ」

ヴィゼルは何事もなかったようにエメザレの顔を見て微笑んだ。
エメザレはヴィゼルの唐突な訪問を奇妙に思うより、ただ純粋な喜びを感じた。ジヴェーダ以外人物が来るのは、エスラールと別れてから初めてだった。

「久しぶりだな。体の具合はどう?」

ヴィゼルはリンゴがたくさん入ったバスケットを差し入れに持ってきて、ベッドサイドに置いた。

「まぁまぁかな。来てくれて嬉しいよ」
「なんだかこの頃、君の夢ばかり見るんだ。だから気になって」

ヴィゼルは全てを無視した。嘆願書を送ってきたことも、エメザレが女の服を着ていることも昼から酒を飲んでいることもベッドに柵がつけられていることも、全てを無視して話を始めた。

「どんな夢?」
「昔の夢さ。十六歳の時、よく変なすごろくで遊んだろ」
「セカテでしょう。暴虐ロード。変な指令がたくさん書いてあるやつ。君とエスラールが作った超大作。よく一緒に遊んだよね。覚えてるよ」

「あの時さ、あの時、ほら殺人事件が起きたから、それで君が僕たちの隊に移動になっただろう。僕はあの時、君のことが怖かったんだ。暗闇の底に一人で沈んでる君がとてつもなく恐ろしくて、見たくなかったんだ。どうしてこんな触ったら引きずり込まれそうな奴に、エスラールはなんの迷いもなく手を差し伸べることができるのか、僕には理解できなかったんだ。どうして一番という地位を長年の親友の僕ではなく、暗闇の底の君に差し出したんだろうと思ってずっと悲しかったんだ」

こんなにもヴィゼルの顔をまじまじと見ながら話すのはどれくらいぶりだろう。いつも一緒にいたので、改めて顔を見つめ合うことがなかった。
できるだけ表情を見せないよう気を付けて話しているようだったが、遠くを見ているようなヴィゼルの瞳はなんとなく辛そうだった。

「うん。もちろん知ってたよ。でももう、その地位は君に返したよ」


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