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エメザレの予想通り、三ヶ月で内紛を鎮圧する予定が長引くに長引いて十か月になった。

治まってすぐに、エスラールがやって来た。十か月ぶりに会ったエスラールはなんだか逞しくなっていて、貫禄がついたように見えた。エスラールはエメザレを抱擁し、早々に興奮した様子でその間に起こったことを、とにかく熱く語った。

エスラール同志、ガルデン軍158期は、黒い髪の農民達の反乱を治めるために、クウェージアより招集がかけられた。現地に行ってみると農民たちが武器を持っていることに驚いたそうだ。

これまでの農民の反乱といえば、農具が主な武器だった。剣や、防具を提供した何者かがいる、そして裏で誰かが資金援助をしていると踏んだエスラールは裏の組織を調べさせた。

愛国の息子達には、同窓団体の愛息会が存在していた。そしてその愛息会の中に友愛会という秘密結社があることを突き止めた。

友愛会は反乱軍に加担する愛国の息子達の団体であった。実質的に、立場が違うだけで反乱軍と変わりない。

友愛会には農村反乱軍より格段に金があり、地位があり、自由があった。彼らは秘密裏に反乱軍に支援を行っていた。

もちろん招集があれば、素知らぬ顔でクウェージア側として出兵するのだが。

友愛会にはかなり位の高い者もいた。よって彼らが大隊を率いることになる。彼らはできるだけ反乱軍に被害が及ばない形で、形式的な戦闘を続けてきたのだ。内紛が治まらない理由はそれだった。

エスラールは友愛会の存在を知ったとき、どうにかして仲間になりたいと思ったと言った。

エスラールはエメザレの一件でクウェージアに心底失望していた。長年、誤魔化しに誤魔化してきた白い髪へ立ち向かいたい気持ちを止められなくなっていた。

友愛会は、彼らのほうからエスラールに接触してきたらしい。

会主である132期のウェル=ゲトツァーネは、彼ら、エクアフ種族の平均寿命をとっくに超えていた老将だったが、まだまだ健在であり現役であった。ウェルはエスラールを好意的に迎え入れた。

エスラールの魔法のような人徳が買われたのだろう。

友愛会はごく少数で構成されていたが、エスラールとその賛同者たちが、いわゆるエスラール一派が加勢したことで、倍以上の勢力になった。エスラールは友愛会の多数を手中に収めることに成功したのだった。

友愛会の支援で内紛を長引かせている間、エスラールは反乱軍のトップであった、アスティゴ・カレとの接触にも成功した。

長年培わられてきた友愛会との信頼関係のお陰もあり、アスティゴとすぐに友好関係を築いたエスラールは、アスティゴと数か月の蜜月の後、お互いの思想を理解し合えた時期に、長引かせていた内紛を治めるようにアスティゴに願い出た。

アスティゴはエスラールの申し出を受け入れ、内紛は治まったのだった。

クウェージア側からは内紛を治めた英雄となり、友愛会と反乱軍からは革命の期待を背負う英雄となったのだ。エスラールはもはや、両者の勢力で無視できない存在となっていた。

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