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ジヴェーダは大体一か月に二、三度くらいの頻度でエメザレに会いにきた。当人が最初に述べたとおり、話しをするというよりも、酒を飲みながら鑑賞するようにエメザレを眺めているのが常だった。

眺めて何が楽しいのかわからなかったが、拷問した時のことでも思い出して、それをつまみに酒を飲んでいるのだとしたら、美術館という表現は間違っていない。

その時にはいつもエメザレに強いラム酒をくれた。少し酒に酔って、お互いの生い立ちについて語ったこともあった。

ジヴェーダが会いに来る時は、昼も夜もフルコースで特別な料理が出てきた。美しい装飾の皿に繊細に盛られた食材は、この国で普通に生きていたら見かけることもできないものばかりだった。

最初エメザレの分も運ばれて来たときは驚いた。どうして自分にもこんな豪華な食事を与えてくれるのか、それまでのジヴェーダの印象から考えると信じられないことだった。

エメザレは片手しか使えないので、初めの頃は看護婦レイテがいちいち切ってエメザレに食べさせていたが、看護婦の存在が鬱陶しくなったのか、いつの間にかいなくなり、代わりにジヴェーダが切って、犬か何かに餌を与えるように皿に放り投げてきたものをフォークで食べるようになり、多分それも面倒になって、最初から切られている料理が出てくるようになった。

料理人は相当見た目にこだわりがあったのだろう。エメザレのために切られた料理は、特別な形で鮮麗に盛り付けられていた。

エメザレはジヴェーダのことがそもそも嫌いではなかった。彼は確かに自分を拷問したが、それはただの仕事だったはずだ。彼の意思ではない。王の意思だ。

このクウェージアでは混血の灰色髪がつける職業はごく一部だった。貧困から這い上がろうとすれば、拷問師になるくらいしかないのだ。

エメザレが強制的に軍人にさせられ、ガルデンという箱に詰められ訓練を受け、外へ行ってひとを殺さなくてはならなかったのと同じことだ。だから同業者みたいなものだと最初から感じていた。

ジヴェーダと話す時間は、それなりに楽しかった。



しばらくすると、この場所は基本的にジヴェーダが拷問して気に入った女が入る施設なのだということに気が付いた。車椅子で散歩する時、すれ違う女性は美人ばかりだった。エメザレは自分の存在は異端だと思った。

中には二年前に起こった『白の大粛清』で生き残った子女と思われる白い髪がいた。

もちろん彼女と面識があるわけではなかったが、家紋章の入ったストールのようなものを羽織っていたので気が付いた。

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