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「あなたは完全にヴェーネンではなくなるのです。ヴェーネンに酷似した新しい生命体でもない。あなたは私と同じ新造生物ゴルトバに、エメザレ=ゴルトバになるのです。

もう肉体の快楽を必要とすることも愛の定義に振り回されることもない。心が蝕まれることもなく優しさや安らぎに惑わされることもない。一つの個体として己のみで完結しているのですから。

さらに美しく賢く強く孤高の超完全体として新たに誕生し、そしてゴルトバの子として第零の位を授けましょう。様々な変則能力を付属できる許可も与えましょう。あなたは私の完全なる最高の子供となるのです。あなたは私によって世界に永久に保存されるのです。

そして、ヴェーネンとしてのカテゴリを外れ、美しの君よ、かつての悪い眼差したちを破壊し粉砕し根こそぎ消滅させ国ごと滅ぼし焼き尽くし灰の嵐にして彼らの遺伝子を根絶させ天の日を起こしてあらゆる玉座に君臨し御稜威の如き輝きを放ちながらあの時の忌まわしい汚辱と不条理の日々の憤怒を晴らし給え。

世界よ、どうぞ功徳を果せし新しい君に、甘露の社からの壮絶な祝福を捧げて、世界は畏み恐れ給いかんながらに常しえに蘇り還り給え」

莫大な白い月を目掛けて、幾億の小さな流れ星たちが、空に何億もの線を描きながら世界の月に集約されていく。月に引き寄せられるように突撃するように、破壊しようとしているのか、いや、融合しようとしているのか。

 やがて無数の星々が月に突き刺さると、月は鼓動するかのように、息を吸うかのように揺らめき、内部で幾回も分裂して成長していくと、月という殻を破り捨てて空へと生まれ出て、空を、世界を侵食していく。

さらに分裂し歪つに膨らんでいく月が赤い空を覆いつくし、凄まじい勢いで世界中を包み込み、二人を飲み込み優しく侵していき、全てが同じとなり無数の白い月がエメザレの内部まで支配する時、目の中に月だけが映った。



月が綺麗だよ。エスラール、月が綺麗なんだ。









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