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エメザレは王宮を追放されたのち、しばらくは軍事病院に入院していたが、不名誉除隊が決定したため一般病院に移転しなければならなくなった。

あと半年の軍期を終え、二十五歳になれば、十六歳から二十四歳までの兵役に対する恩給が支給されるが、エメザレはまだ二十四歳半であり、不名誉除隊の場合は貰えない。つまり無一文の状態でガルデンを追放されることになる。

そうなると一般的な設備の病院へ行くことはできない。無償で入れるのはエルド教系の教会病院しかなかった。

だが教会病院では適切な処置をしてもらえない。無償なので誰でも入院できるが環境は劣悪そのもので、死んでも数日気付かれないことすらある。臭いがひどくなり蛆が沸いてから、やっと死んでいることに気付いても貰えるのだ。

ただ横たわっている場所を与えてくれるだけ、という有様で、むしろ教会病院に入院した方が変な病気にかかりそうだった。

食事は出るが自力で食べなくてはならないし、何をするにも介助はつかない。できなければゆっくりと衰弱して死ぬのを待つだけだ。

つまり死ねということだ。

不名誉除隊が決まった時、エメザレは理解したが、不思議と恐怖や悲しみは抱かなかった。元々の予想通りだったので、むしろ少しおかしいくらいだった。

エスラールを始めとする友人たちは、不当な扱いだとして激しく抗議したそうだが、無論そんなことでガルデンの決定事項が変わることはない。エメザレの冷静さとは反対に彼らは泣いて悔しがっていた。

だが、そんな折、一通の手紙が届いた。差出人は聖敬母エリン養生病院。

エメザレを無償で受け入れるとあった。そこにはエメザレに対する賞賛の言葉が添えてあったので、エメザレへの賛同者だと誰しもが考えた。

ただ一人冷静なエメザレだけが不審に思った。

白い王子がエメザレをかばったのは、日常的にエメザレが王子に媚び諂っていたからだと黒い髪たちは思い込んでいた。驚くほど世間はエメザレに対して冷酷だったのだ。そんな中に現れた救いの手が少し恐かったのかもしれない。

しかしどの道、選択肢は残されていない。友人たちの後押しもあって有難く申し出を受けることにした。エメザレは友人たちと半年の別れを惜しみながらも、養成病院に送られることとなった。

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