3/6


どんな苦痛にも耐えられる才能だ。どんなに辛くても死なない才能だ。確かに少年の時には持っていた。独りぼっちで壊れていたけど、死ぬ気は全くしなかった。

エスラールに寄り掛かってしまったら、二度ともどれなくなると、あの時からわかっていた。でも寄り掛かっている時、全てが赦されている気がして初めて肯定された気がして、ものすごく心地よかった。

エスラールの皮膚に触りたい。柔らかい猫みたいな毛。純粋無垢な魂に。もう一度。もう一度。会いたいな。
今何をしているんだろう。こんなことをしてるから、会ったら軽蔑されるかな。
あの笑顔が見たいな。魔法みたいな素敵な笑顔。

あの笑顔を見ると誰しもが幸せで温かい気分になる。優しい気分になりたいな。
食べさせてくれた玉子焼き、変な形だったけど、甘くていつも美味しかった。卵の殻が入ってじゃりじゃりしてたの気付いていたのかな。どんな顔して作っていたのだろう。
きっと魔法みたいに優しい顔だよね。

でももう二度とエスラールはやってこない。



もはやジヴェーダが来ることが、抱かれることだけが心の救いになっていった。
ずっと抱き続けてほしいとさえ思った。している時は何も考えなくていいからだ。外部を認識するのが苦痛だった。

エメザレはおそらく、もうガルデンの記録からも消されている。エメザレは表の世界に最初からいないことになっているだろう。もう存在しないのに、それなのに、確かにここに存在し続けていることが耐えられない。

何もわからなくなってしまえばいいのにと思った。
そして抱かれている時は僅かな安心を感じていた。一人ではないような気がして、まだ居場所があるような気がして、なんだか少し安心するのだ。

それ以外に繋がれるものも、すがれるものもなかった。


- 30 -


[*前] | [次#]

しおりを挟む



モドルTOP