6/7 「ねぇ、どうしてずっと私を抱いてくれなかったの。私が男だから? 私が女の人とできないのわかってるでしょう。なら私の気持ちはどう処理するのが正しかったの。私には温もりを感じる権利もないの。どうしてそれをかつての君がくれなかったの」 「エメザレ」 エスラールはエメザレに口づけた。 温かい唾液と舌が入り込んでくる。それまでずっと待ち望んでいた温かさだった。 けれどももう必要ない。必要としたところで、もう手に入らないのだから。 引き離そうとするが、いまだかつてないくらいに強く押さえつけて離さない。 「やめて」 そのまま強引にベッドに押し倒された。 「痛い! 嫌だってば!」 レースのついた裾野からエスラールの手が割って入ってくる。 「俺がだめだからあいつを選んだの」 「やめて! 見ないで! もう……もう、許してよ……なんで君まで乱暴するの」 エスラールは忠告を無視して、美麗なレースが付いた白い服を引き裂いた。 晒された身体。継ぎ接ぎだらけの、醜い身体。綺麗な部分なんて残っていない。きっと見たら永遠に忘れられない。 化け物だもの。体中が縫われて無理やりくっつけて、こんな姿でまだ息が吸えるんだと、人体の不可思議に誰もが驚愕するだろう。 「ごめん。ごめん。ごめん。ごめん。酷いことしてごめん。痛かったろ」 エスラールは泣いていた。目を見開いて、見開いたまま、エメザレの身体を眼球にしっかりと映して、そして大きな雨粒みたいな涙を継ぎ接ぎだらけの身体に落とした。 「守れなくてごめん。約束したのに。宮廷になんて行かせなければよかった。無理にでもどうにかして君を止めればよかった。俺が行けばよかった。ごめん。ごめん。ごめんね。ごめん。やっぱりできない。俺にはできない。可哀想でできない。君、どれだけ痛かったの。一人でどれだけ辛かったの。これ以上に、君の身体を酷使するなんて、俺には無理だ。ごめん。ごめんね」 エメザレに覆いかぶさるようにして抱きしめてエスラールは泣いた。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |