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「ねぇ、どうしてずっと私を抱いてくれなかったの。私が男だから? 私が女の人とできないのわかってるでしょう。なら私の気持ちはどう処理するのが正しかったの。私には温もりを感じる権利もないの。どうしてそれをかつての君がくれなかったの」

「エメザレ」

エスラールはエメザレに口づけた。
温かい唾液と舌が入り込んでくる。それまでずっと待ち望んでいた温かさだった。
けれどももう必要ない。必要としたところで、もう手に入らないのだから。
引き離そうとするが、いまだかつてないくらいに強く押さえつけて離さない。

「やめて」

 そのまま強引にベッドに押し倒された。

「痛い! 嫌だってば!」

 レースのついた裾野からエスラールの手が割って入ってくる。

「俺がだめだからあいつを選んだの」
「やめて! 見ないで! もう……もう、許してよ……なんで君まで乱暴するの」

エスラールは忠告を無視して、美麗なレースが付いた白い服を引き裂いた。
晒された身体。継ぎ接ぎだらけの、醜い身体。綺麗な部分なんて残っていない。きっと見たら永遠に忘れられない。
化け物だもの。体中が縫われて無理やりくっつけて、こんな姿でまだ息が吸えるんだと、人体の不可思議に誰もが驚愕するだろう。

「ごめん。ごめん。ごめん。ごめん。酷いことしてごめん。痛かったろ」

エスラールは泣いていた。目を見開いて、見開いたまま、エメザレの身体を眼球にしっかりと映して、そして大きな雨粒みたいな涙を継ぎ接ぎだらけの身体に落とした。

「守れなくてごめん。約束したのに。宮廷になんて行かせなければよかった。無理にでもどうにかして君を止めればよかった。俺が行けばよかった。ごめん。ごめん。ごめんね。ごめん。やっぱりできない。俺にはできない。可哀想でできない。君、どれだけ痛かったの。一人でどれだけ辛かったの。これ以上に、君の身体を酷使するなんて、俺には無理だ。ごめん。ごめんね」

 エメザレに覆いかぶさるようにして抱きしめてエスラールは泣いた。


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