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もうてっきり来れないはずだと思っていたのでエメザレは驚いた。

嬉しいというより、感じたのは血の気が引くほどの罪悪感だった。もう来ないでいてほしかった。
おそらく友愛会の制止をかなり強引に振り切って来たのだろう。

エスラールは微笑みながらやってきたが、エメザレが女性用の入院着を着ていることに気が付いて不思議そうな顔をした。そして、エメザレの顔を見て心配そうな顔をした。かなり青ざめて引きつっていたのだと思う。

「……あ、あの、ごめんなさい。エスラール」

正気に返ったという表現が正しいかもしれない。
この施設に飲み込まれて麻痺していたと、エスラールの顔を見て思い出した。
身体中が震えだし、焦点が合わないほどに狼狽した。

「どうし……た。何があったんだ」

只ならぬ雰囲気にエスラールが不信の表情を顔に映した時、部屋のドアが開いた。

「おやおや、彼氏様がおいでだったとは、これは失礼」

ジヴェーダはグラス片手に、遠慮なくずかずかと部屋に入ってきて、エスラールに一瞥をくれた。

「エメザレ、俺が置いてった酒、どこにやった」

ジヴェーダは適当に部屋を物色すると、戸棚にしまってあった酒を見つけて、並々注ぎ込んだ。あまりの事態にエメザレは言葉も出なかった。
 どうしよう。止めようがない。

「お前、よくも俺の前に現れたな」

エスラールはジヴェーダの胸倉を掴んだ。そのまま引きずるようにして壁に押し付けた。酒がこぼれて服が汚れたので、ジヴェーダは舌打ちした。

「なんで今まで俺を避けてたんだ。何年も」
「こうなるからだ。俺は仕事でやったんだ。お前に恨まれる筋合いはない。怒りをぶつけたいなら陛下に怒れ」
「そういうことじゃない」
「お前だって軍人だろう。人殺す時、いちいち悲しんでるのか」

エスラールの凄みに屈することなく、壁に押し付けられたままジヴェーダは飄々とした表情で、グラスに残っていた酒を飲んだ。背の高さと、がたいの良さなら格段にジヴェーダが上だ。ジヴェーダには余裕があった。


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