6/6 一度横になると起き上がるのに時間がかかる。上から押さえつけられた状態では、起き上がることも逃げることも、体を動かすことさえ不可能だ。 「何、考えてるんです」 エメザレは右手で抵抗したが、ジヴェーダは簡単にねじ伏せた。馬乗りになり顔を近づけて、獲物の匂いを嗅ぐ肉食動物みたいに、耳元から首のあたりに鼻を押し付け、耳元を愛撫するかのように熱くてアルコールの匂いがする息を吹きかけてくる。鼓動が早くなる。嫌な感覚。 「嫌だ……やめて、ください」 「騒いでもいいが、どの道お前、声出ないだろう」 エメザレの衣服をゆっくりとしていく。拷問を受け傷だらけになった身体は、切った体をもう一度無理やりくっつけたかように、縫合された継ぎ接ぎの醜い痕が幾筋も残っている。綺麗な皮膚などほとんどない。 晒された身体を月明かりに照らして、ジヴェーダはうっとりと鑑賞していた。 あの宮廷の時とは明らかに違う手つきで、ジヴェーダはエメザレの胸を撫でた。縫合された傷口に沿って指を這わせる。他の場所とは明らかに違う痺れた感覚がする。 「嫌だ……見ないで……見ないで……見ないで。私を……見ないで」 右手で振り払おうとするが手首を掴まれた。敵わないのはわかっているが抱かれるのが嫌だった。想像するだけで自分でもぞっとする。 こんなにも醜いのに更に醜い行為をされるのが嫌だった。醜さの塊になりたくない。涙が溢れだした。 またみんなが軽蔑する。こんな姿になってまで、まだ男に抱かれていると嫌悪する。 あのたくさんの悪い眼差したち。もう堕とさないで。これ以上、私の全体を悪いもので覆わないで。私はしたくないやりたくない。私の意思じゃない。私は悪くない私のせいじゃない。 「もう、離して、離して! 嫌、嫌……やめて……やめてください。お願いします……ジヴェーダ様!」 全身で抵抗を試みたが馬乗りのジヴェーダは全く動かない。 「お前が誘って来たんだろうが。抱かせろよ」 ジヴェーダはエメザレ足を強引に開かせて割って入ると股をまさぐった。包み込んでくるその手は意外にも温かかった。なんて、なんて懐かしいんだろう。触られて思わず身体がびくりとした。 「……同情か、なんかですか」 「同情? 勘違いするな。俺は傷ついて死にそうな奴を見ると欲情するんだよ。いいから早く股開けよ。あの時みたいに」 すでに硬くなっているものを誇示して、服越しに押し付けてくる。その熱を入り口が感じると離したくないみたいに、食いつきたいみたいに収縮して悲しかった。 傷口をこじ開けるように熱がエメザレを侵略しようとする。忘れようとしていたあの感覚。あの温かい赤いあの粘膜の融合。醜くて尊い。いつもエメザレを狂わせる、残酷な救いのような融合だ。 わからない。でもすがりたくなってずっと泣いている。 「お前は何も悪くない。お前は俺に強姦されただけ」 ジヴェーダは微笑んだ。 もういい、と思った。もう犯されるんだから、それならばせめて、せめて、何もわからなくなるくらいに、めちゃくちゃに破壊してくれ。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |