2/7


白の大粛清とは、とある力のある白い髪の貴族たちが、黒い髪にある程度の権利を与えるよう国王に直談判したことで起こった、宮廷内の事件である。

貴族たちは一族根こそぎ処刑されたが、十五歳以下の女子だけは子宮を焼くことを、つまり子孫を残さないことを条件に処刑を免れた。宮廷はそれを恩情と表現した。

ともすれば、ここにいる多くの女性たちは妊娠しないのかもしれない。それは拷問師にとって都合がいいのだろうと思った。

確かに片足がなかったり、指や耳がちぎれているひともいたけれど、みんな美しかった。

彼女たちは綺麗に髪を結ってもらい美麗に化粧をして、光輝く装飾品をつけていた。高級な白い女性用の入院着は首元と袖口と裾の部分にたくさんのレースがついている。

この施設では常に甘いルーノリアの花の香が焚かれていた。だから彼女たちの身体からは、きっと花の匂いがするのだろう。

エメザレだけが違う意図でここにいる。おそらくジヴェーダは愛国の息子達の動向を気にしているのだ。そのためにここにエメザレを置いた。

当たり前だが、黒い髪の反乱が頻発している時世に、一時的とはいえ、それでも英雄と呼ばれた存在を瀕死にさせたのだから、反発が起こることくらい予測できる。

世間がいくらエメザレを忘れ去っても、エスラールは、そしてエスラール率いる愛国の息子達は忘れない。あのエスラールがいる限り愛国の息子達はいずれ動き出す。エメザレを手元に置いておけば、その周りの動向をある程度は把握できる。

エメザレはそのためにここにいる。彼女たちのように愛でられるためではないのだ。



そして約半年が経った。

158期の愛国の息子達は長らくの軍期を終え、ある程度の自由を与えられた。

住む土地と家を与えられ、地域もある程度自由に選択することができた。十六歳から二十四歳までの兵役に対する恩給として、かなりまとまった額の金銭も支給された。

家族を持つことが許され、婚姻祝い金や出産手当、そして死ぬまで定期的に年金が支払われる。

彼らには二十五歳を過ぎてやっと安泰が与えられたのだった。

半年ぶりに会ったエスラールは変わりないように見えた。


- 9 -


[*前] | [次#]

しおりを挟む



モドルTOP