6.どんぐりと宝物
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 はいけい、エメザレくんへ。
 ぼくが誰だかわかりますか。何度か目が合ったことがありますね。きっとぼくたちはあの時、同じことを思ったのだと信じて手紙を書きます。きみはこの木の下で休んでいることが多いので、ここに置いたのですが、ぶじに受け取ってもらえているでしょうか。きみに手紙を書くというのは少し危険なことです。ぼくはとても勇気を出しました。きみにとってめいわくかもしれないと思いました。色々と考えましたが、ぼくはどうしてもきみと友達になりたいのです。

 きみはぼくと同じ目に合っていますね。ぼくたちは似ています。同じようにきず付き、悲しいと思っていることでしょう。きみは一人ではありません。ぼくにはこういった話のできる友達がいませんし、あまり話したいことでもありませんが、きみだけは特別です。特別な相談の相手に、特別な友達になってくれませんか?

 もし、ぼくを受け入れてくれるなら、裏庭にある一番大きな石の下に返事の手紙をかくしてください。石の下には穴が開いているので、場所はすぐにわかると思います。ちなみにそこは、ぼくの集めたどんぐりのかくし場所になっています。もし欲しければ、いくつか持っていってください。親愛の証です。

 それと返事は必ず手紙にしてください。ぼくたちは会って話し合うことは、やめた方がいいと思うのです。きみならば、ぼくの言いたいことをわかってくれますよね。ひとにはそれぞれ、適切なきょりがあります。悲しいことですが、会うことはお互いのためになりません。けれども、それはあくまでも『今は』の話です。いつか。いつか、ぼくたちは話し合う事ができると信じています。

 あのひとたちのいない世界で、ぼくたちは自由になって、そしていつか会いましょうね。
 ぼくはきみをとても愛しています。もちろん、きれいな気持ちで。




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