17.強さの証明
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「シマ先輩」

 エメザレは、まるで待ち焦がれた恋人がやってきたかのように、自然に、シマに向かって走り出した。

「おい、行くな」

 エスラールはエメザレの手を掴んだが、振り払われた。追いかけたが、エメザレがシマに抱きついたのを見て足を止めた。シマの胸に顔を埋めるエメザレは、本当にシマの恋人のように見えた。エメザレはシマのことを少しも憎んでいないだろう。助ける必要はないのだ。そして二人の関係に立ち入ってはいけないのだと思った瞬間、思いがけず自分が傷付いたことが信じられなかった。

 シマは胸の中のエメザレではなく、エスラールを見た。一切の感情を廃した鏡のような瞳だった。一体どうして自分を見るのかわからない。

「優しくしてください」
 エメザレが言った。

「優しく」
シマはエスラールを見たままだ。疑問符はついていない。昨日と同じく平坦な喋り方だった。

「僕が恐れているのは、僕に向けるはずの憎しみを、僕以外に向けられることだ」

 エメザレは言葉を区切ったが、シマはなにも答えない。

「僕は四年間、あなたの憎しみをこの身体で受け止めてきた。僕はあなたの顔を潰したから。シマ先輩、あなたは強い。一番強い。憎いと思うだけで誰かを殺せるほど強いんだ。自分の強さをわかってください。僕は耐えることができても、みんな僕のように頑丈にはできてない。優しくしてください。あなたは二号隊を変えることができるただ一人の存在だ」

 だがシマはそれでも答えずにエメザレを引き離した。



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