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「僕のこと友達だって言ってくれたのも、友達になろうとしてくれたのも、そうやって僕を止めるのも、サイシャーン先輩に言われたからなんでしょう」

「確かにそうは言われたけど、そうじゃなくて――」

「僕と変な噂たてられても構わないのだって、総隊長って後ろ盾があるから大丈夫だと思ったんでしょう。そりゃあそうだよね。エスラールの気持ちも知らないで、本気で怒ったりして、僕ってばかだね」

 ミスした自分を小ばかにするように、エメザレははにかんだ。

「俺の話、聞けよ。確かに俺は頼まれたよ。だけど総隊長が俺に頼んだのは、頼まれなくてもそうする奴だからだよ」

「僕、一瞬信じちゃったよ。だってエスラールは、嘘つけなさそうに見えたからさ。君はすごいね。全然見抜けなかった」

「だから、違うってば! 俺は嘘なんてつけないよ。全部、本当に思ったことだ」

 エスラールは声を荒げた。
 エスラールがサイシャーンにしたことは、告げ口かもしれないが、エスラールにもサイシャーンにも悪意があったわけではない。というか善意しかない。エメザレを心配する気持ちも助けたいと思う気持ちも本物だ。でなければ、ゲロまみれのエメザレを助けたりするだろうか。ケツの中まで洗ってやるだろうか。訓練中に制服の交換を教官に懇願したりするだろうか。ボタンだってつけてやったのに、こんなに、なんとかして救いたいと思っているのに、エメザレに、その気持ちまで嘘だと思われるのは悔しかった。なんだか全てが報われていない気がして、無性に腹が立ってきた。

「そんなに頑張らなくていいよ。僕はチクったりしないし。ちゃんと止めたって言うから、だからそこ、通して」

 エメザレはエスラールの手を引き離そうとした。

「お前、さっき総隊長と、もう行かないって約束しただろう。約束は守れよ。二号寮に行くってことがどういうことなのか、わかって言ってんのかよ。誰か死ぬかもしれないんだぞ」

 しかしエスラールはエメザレの手首を掴んで放さなかった。強い力で締め上げると、エメザレは自由の利くもう片方の手で抗った。エメザレが持っていた毛布が床に落ちた。

「わかってるよ」

 エメザレの口調は本当にどうでもいいという感じだった。



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