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「いやいや、うへへ、照れるじゃんか」
「あれ、あの台詞。あれよかったな」
「あ、わかった! あれだろ?」

 ヴィゼルはひらめいたように言うと、エスラールの頭を引き寄せ、なんとなくぞっとするような優しい手つきで頭を撫でた。

「……早く、脱いで」
「そこを抜粋すんな!」

 エスラールはヴィゼルの頭をぶっ叩いた。

「おい、エメザレ。エスラールに一言お礼くらい言いなよ」

 ヴィゼルが、少し遠くに歩いていたエメザレを見つけて言った。エメザレはそれに気がついて一瞬こちらを見たが、足も止めずに冷めた一瞥をくれただけだった。助けたときは確かにありがとうと言ったのに、なぜ今はそんな目をしたのか、若干疑問に思ったが、みんながいる前で改めてお礼を言うのが恥かしい、という気持ちなら、わからなくはない。エスラールは気にならなかった。

「なんだよ、あの態度。エスラールがせっかく助けてくれたっていうのに」

 だがヴィゼルが口を尖らせた。

「うわー、嫌な奴」
「デイシャールに負けず劣らず根性が悪いな」

 遠くのエメザレには聞こえないだろうが、そんな言葉があたりから湧いて出る。



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