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 訓練が終わると、エスラールは真っ先にヴィゼルの姿を探した。朝方、ヴィゼルがサロンでエメザレのボタンを拾ったと言っていたのを思い出したからだ。

 エメザレの制服はエスラールには小さすぎた。少し手を挙げただけでヘソが見えるし、肩幅もぱんぱんだし、袖は八分袖状態で、あからさまにつんつるてんだ。

 申請すれば新しい制服をもらえないこともないのだが、ただではなかった。元々、この制服は自分のものではない。国から貸してもらっているのだ。成長に伴い着られなくなった場合は、返却となるので金はかからない。しかし破損の場合は積立金から引かれることになっている。積立金というのは、二十五歳になってガルデンを卒隊するときに、クウェージアから支払われるいわば退職金のようなものだ。とはいえ以降も軍事に従事することになるので、正確には中間退職金といったところだろうか。

 大金は大金だが、老後の生活やらを考えると、今、無駄に消費するべきではない。幸い、ボタンが吹き飛んだだけなので、直すのは簡単だった。

「ヴィゼル!」

 ヴィゼルを見つけて、エスラールはその背中に飛びついた。

「友よおおおおおおぉぉぉぉーー! 僕は痺れたぞ! さすがは僕の愛する男! 今日は僕が鼻血を噴出すところだった」

 ヴィゼルはエスラールの腕の中で向きを変え、しっかりとエスラールを抱きしめる。抱きしめ返すエスラール。やはりヴィゼルの抱き心地は最高である。多少無碍(むげ)にしてもびくともしなさそうな、抜群の安定感がとても良い。
 そんな二人を取り巻くように一号隊のメンバーが寄ってきた。

「エスラール、朝はかっこよかったなぁ」
「デイシャールの慌てっぷりが最高だったよ。俺スッキリした」
「つか、俺、あんなことされたら惚れるわ」

 次々に上がる称賛の声に、エスラールは気恥ずかしさを感じながらも、ささやかな優越感に浸った。


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