4/10 が、答えはない。しかしもう一度発言するのは逆効果だ。さらに機嫌が悪くなる。デイシャールの気が向くまで待っているのが一番の得策だった。 「エスラール、発言を許可する」 意地の悪いしばらくの沈黙の後、デイシャールはやっと言った。 「僕の制服と、エメザレの制服を交換する許可を頂けないでしょうか」 「そんな配慮は必要ない」 「ですが――」 「口答えをするな」 後ろにいると思っていたデイシャールが、自分のすぐ脇に佇んでいたのでエスラールはぎょっとした。さすがに幾多の戦闘経験をつんでいるだけのことはある。気配がまったくしなかった。眼球を横に向けると、デイシャールが吊上がった目元をさらに引き上げて、激しく怒かっている。 「お言葉ですが、僕の任務に関わることですので引けません。許可をください」 面倒な展開になるのを承知で、エスラールは食い下がった。 「任務?」 デイシャールの顔色が変わった。特に深い意味を込めたわけではなかったのだが、デイシャールは変に深読みをしたらしい。サイシャーンに告げ口をする、とでも解釈したのだろう。 デイシャールが殺人事件について、どこまで知っているのかはわからない。隠蔽体質のガルデンのことだ。全貌は知らないだろうが、それでもサイシャーンが、殺人事件の“なにか”で特権を与えられたことは知っているはずだ。そしてエメザレを一号隊に同化させる件に関しても、協力命令くらいは出ていたのかもしれない。そのあたりの事情は謎だが、とりあえず助かったようだ。 「正当性はこちらにある」 にわかに冷静を欠いた声色だった。 「はい。その通りです」 「わかった。早く交換しろ」 デイシャールは苦い顔で促した。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |