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「そう。早くなんとかしなければ非常にまずい。総監は反王家勢力の存在を私に知らせてしまうほどに困っている。エメザレの転属は応急処置だ。君の言うとおり、エメザレを犠牲者から外すことだけが目的ではないだろう。最終目的は別にあるとは思う。だがユドは最終目的に関しては黙秘を続けているらしい。私は、言わないのではなく、おそらく知らないのではないかと思うが。
実のところ総監はユドが犯人ではないと考えているようだ。能力検査の結果を見れば誰だってそう思うだろう。サディーレの戦闘能力は二十五段階評価で『二十三』、対してユドの戦闘能力はなんと『一』だそうだ」

「なんの誇張でもなく、気持ちいいくらい本当に最弱なんですね」

 能力検査というのはいわゆる試験であり、年に二回ある。つい先日も中間能力検査が実施されたばかりだ。この能力検査の結果が、後の昇級に関係してくる。
 筆記検査については順位が出るが、戦闘能力検査は二十五段階評価で結果が出る。兵は各年齢、だいたい百人なので、単純に二十五で割ると四人が『一』を食らうことになる。が、それにしても『一』とはひどい。

「そうだ。ユドはぶっちぎりの最下位。これぞ落ちこぼれ的な存在だった。普通に考えてサディーレを殺すのは無理だ。たぶんサディーレを殺したのはユドではないだろう。犯人は反王家勢力の誰か――複数の可能性もあるが、ユドはその人物の身代わりになって逮捕されたと考えると辻褄が合う」

「それで結局、総監は事件をどう解決するつもりなんです? なんか今の状況だと臭いものに蓋をしただけって感じですが」

「ロイヤルファミリーに勘付かれることなく反王家勢力を割り出し、説得してロイヤルファミリーと仲良くさせたい、らしい」

 サイシャーンも半分呆れたような声を出した。

「なんちゅー無茶な……。そんな都合よく物事は運びませんって。割り出すって言ったって、どうやってですか?」

「二号隊には内偵がいるはずだ。二号隊にも一人以上、事件の詳細を知っている人物がいる。それは誰だか私にはわからないが、ロイヤルファミリーでないことだけは確かだな。そいつが、二号隊の内部の状況を総監に報告しながら、反王家勢力のことを探っている」

「でも殺人までやるような集団なんですよ。割り出せたとしても、説得なんかできるんですか?」

「さあ、どうだか。私だって総監のしていることは無謀だと感じるよ。一応、私は自分の意見をぶつけてみた。まぁ、無駄だったわけだが」

 サイシャーンは額に拳を当て、不甲斐なさそうな顔をしたが、天下の総監様に一兵士が意見したというだけでも尊敬ものだ。その勇気に是非とも拍手を送りたい。

「あの、ユドはこれからどうなるんですか?」

 答えはたいてい察しがつく。エスラールの声は小さかった。



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