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「まさか、ヴィゼル。君は昨日ここへ来たのか」

「来たよ。昨日、エスラールがエメザレのあと追っかけて帰っちゃっただろう。邪魔しないほうがいいかなと思ったし、ディルソナトにゲームしようって誘われたから、ラリオたちとディルソナトの部屋で夜中まで遊んでたんだよ。で、自分の部屋に戻ろうとサロンの前を通りかかったら、制服のボタンが落ちてたからさ、バファリソンに絡まれたときに取れたエメザレのボタンだろうと思って、拾って届けようとしたんだ。寝てたら悪いからノックしないでドア開けたんだけど――それにほら、なんかエスラールのこと心配だったし、童貞が奪われてたら嫌だなぁと思って、こっそり開けちゃってごめん。でもいなかったよね。なんで?」

「……いやー、えーと。そ、それは……うーむ」

 まさか本当のことは言えない。エメザレが自ら進んで毎日、二号寮のサロンで犯されまくっていることがヴィゼルにバレれば、ヴィゼルは永遠にエメザレを軽蔑するだろう。ついでに、エスラールがエメザレのケツをほじったことも知れれば、ヴィゼルとの友情は崩壊する。
 なぜさらりと嘘を思いつけないのか、エスラールは自分のバカっぷりを呪いながら焦った。

「ま、まさか……部屋だと声が漏れるから、外で? 人生の一発目から青姦……?」

 エスラールの腕の中で、ヴィゼルは自分で言って少女のごとく赤面し、瞳をうるませてウナギのように身をくねらせる。

「そんなわけあるかい! ヴィゼルよ。お前、潔癖というか、実はただのむっつりだろ」

「むっつりとは失礼な! 常識的な妄想の範疇だろう」

「青姦は常識じゃねーよ!」

「じゃあ、どこに行ってたのさ」

 とヴィゼルに言われ、エスラールは考えた。エスラールはエスラールなりに、一生懸命考えたのだ。



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