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 昨晩エスラールは、あの後エメザレを抱いて部屋に帰ってきたのだが、寝間着に着替えさせようとして、どこにもないことに気が付いた。エメザレが二号寮に置いてきたのかも知れないと思ったが、探しに行く気力はもうなかった。毛布に包んだエメザレをベッドの上に寝かせ、エスラールもすぐに爆睡してしまった。

「変なことは言ってたけど、あんまり変なことはしてないかな。身体は洗って拭いたけど」

「よかった。ああなると僕は始末が悪いから、放っといてくれていいよ。もう迎えに来てくれなくていいから」

「もう、ってまた行くつもりかよ。てか、なんで行ったんだよ」

 エメザレの言葉にエスラールは苛立った。できればもう二度とあの現場に立ち会いたくない。ゲロまみれのエメザレを抱き上げたくないし、ケツに指を突っ込むのも御免こうむりたい。卑猥な言葉を連呼するエメザレも見たくない。だから行かなくてすむならば行きたくない。けれどもエスラールは、そういった問題をどうしても無視できない性質なのだ。ゴミはちゃんと綺麗に捨て去らないと気がすまない。適切に処理できるまで、何度でもいつまでもエメザレを助けようとするだろう。自分でも色々と面倒だと思うが、生理現象のようなものなので、こればかりはどうにもならない。エメザレはそれを全くわかっていないのだ。
 エスラールが怒りを含んだ声を出すと、エメザレはうつむいて黙り込んだ。

「なんの必要があって、ああなるとわかっていながら二号寮に行ったの? 俺には、エメザレが望んで毎日あんな目に合いたがっている、ってのが信じられないんだけど。誰かに脅されてるとか、誰かをかばってるとか、そういう理由なら頼むから正直に言ってよ。俺、絶対力になるから」

「そういうんじゃない」

 エメザレは少々の間を置いてから、言って続けた。

「僕は脅されてもいないし、誰かをかばっているわけでもない。理由を挙げるとするなら、そうしないと僕が嫌だから、だよ。好きでしてるんだ。だから助けはいらない。僕のためを思うなら僕をとめないでほしい」

「でも昨晩の君は、どうみても精神的におかしかった。本当にエメザレが好きでしているなら、ああはならないと思う。君は確実に傷付いてるよ。それなのにどうして二号寮のサロンに行くんだよ。直球で悪いけど、なんていうか、エメザレは本当に、その、セックスが好きなの?」

「朝から話題が濃いね」

 エメザレは答えにくそうな顔をして、困ったように笑った。それでもエスラールが無言でいると、エメザレは観念したようにため息をつき、うつむいたまま話し出した。



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