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「うーん。しいて言うならロイヤルファミリーかな? でもエメザレが勝手に望んでそうなってるっていうか、そんな感じ。だからやめさせようとか考えてるんなら諦めた方がいいよ。無駄だから。で、エメザレどかしてよ。床、掃除するから」

 ミレベンゼが淡々と掃除の支度を始めた出したので、エスラールは産まれたてのヒナのようにドロドロになっているエメザレを抱いて持ち上げた。床に寝せるのも冷たくて可哀想に思えたので、仕方なくエスラールは床に座り込み、膝の上にエメザレを寝かせたが、震えが止まっていない。身体は死ぬんじゃないかと本気で心配になるほどに冷たくなっている。腕や足をさすってみたが気休めにもならなかった。

「エメザレ自身がこうされるのを望んでるって言うのか? そんなバカな話がどこにあんだよ。そんな話、信じられるわけないだろうが」

「いや、本当にエメザレには強制してないって。だって、むしろエメザレはロイヤルファミリーのひとりだったんだぞ?」

 ミレベンゼは桶の水を床に巻いた。水しぶきがエスラールの顔や服にも飛んできたが、悪びれる様子もなく話を続けた。

「二号隊のモットーは『弱肉強食』。宴会の犠牲者は成績が芳しくない奴の中から適当に顔がいいのが選ばれるんだけどさ、だいたい三人くらいかな。普通はそいつらをローテーションして使うんだよ。嫌だったら頭良くするか、強くなるかして、のし上がるしかなかったのさ。それなのにエメザレは自分で犠牲者に立候補してきたんだ。『三人もいらない。僕一人で充分だ』とかなんとか言ってさ。誰も文句は言わなかったよ。このとおり、顔はいいからね。でも義務はないよ。嫌なら嫌でやめればよかったんだ。

一号隊に転属になったし、『もう来たくないなら来なくてもいい』ってシマ先輩が言ってたの、俺、聞いてたもん。なのにこうやって部屋抜け出してここに来たわけだろ。エメザレは頭がおかしいんだよ。とっくの昔に精神が破綻したんだ。ガルデンに来る前から、大護院時代からずっとそうだった。犯されすぎて狂って、犯されるのが大好きになったんだよ。どうだ、なかなか幸せな話だろ?」

 ミレベンゼはブラシで床を磨きながら、エメザレを横目で見て笑った。
 エスラールの腕の中では、満足に言葉も話せないエメザレが裸で震えているのだ。精液と嘔吐物にまみれ、身体中に鬱血痕を付けられ、擦れて赤くなった痛そうなペニスを見て、それでも笑ったのだ。エスラールは悔しくなった。



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