6/8 ◆◆◆ 「ほんげっ」 という謎の雄叫びをあげてエスラールは飛び起きた。口の中には毛布が入り込んでいる。おそらく大口を開けながら、いびきでもかいて寝ていたのだろう。毛布が詰まって息が苦しかったらしい。しかし冗談抜きに窒息死寸前だったと思われる。心臓が破裂しそうな勢いで脈を打っている。 寝れないとか言っておきながら、完全に寝ていたことがなんだか間抜けに思えて、エスラールは息を切らせながら一人でせせら笑った。 そしてなんとなしに、エメザレのベッドに目を向けた。 「いねぇぇぇぇぇぇえええしっ！」 エスラールは両手で頭を抱えて絶叫した。 エメザレのベットはまっ平らだった。いくらエメザレが薄っぺたいといっても限度がある。いない。確実にいない。 エスラールはベッドから降りると、エメザレの毛布を引っぺがした。当然のようにいない。これでいたほうが驚きだ。どこにいったんだ。希望的に考えるとトイレだろうか。 エスラールは先ほどまでエメザレが横たえていたシーツに触れた。冷たかった。出て行ったのはかなり前だ。希望的に考えると長いウンコだろうか。 でなければサロンか。そういえばバファリソンに絡まれたとき、制服のボタンが飛び散っていた。もしかしたらボタンを拾いに行ったのかもしれない。 一言断ってくれれば、一緒に探しに行ったものを。 ボタンを拾いに行ったくらいであれば、放っておいても問題はない気もするが、自分には責任がある。エメザレから目を放すなとサイシャーンに言われたのだ。それになんだか嫌な予感がする。 エスラールは半分寝ぼけながら、寝間着に制服のブーツという奇妙な出で立ちで部屋を飛び出していった。 [＊前] | [次＃] しおりを挟む ﾓﾄﾞﾙTOP |