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(中略) 

 ヴォルフィード。私は明日、私を殺すことにしました。
 だからあなたとはここでお別れです。あなたをどうしようかと悩みました。破棄することも考えましたが、やはりあなたは大事な存在なので、それはどうしてもできません。あなたは私が確かに強かったということを物質的に証明してくる、たった一つの存在です。そして同時に私の弱さを書き記した日記でもあります。ですから、どこかへやらねばなりません。

 けれど安心してください。あなたを寂しい場所や汚い場所へ葬ったり致しません。あなたに相応しい、高等で静かな場所を見つけました。
 あなたをそこへ隠したら、私は誇り高く、呻きの一つもあげることなく、ゆっくりゆっくり、生命という名の源流がついに途絶えてゆくように、薄い煙がいつの間にか消え去るように、苦しみとは無縁のような顔で、最後の尊厳として、心ばかりの微笑みを湛(たた)えて私に殺されます。

 ヴォルフィード、あなたに感謝しています。こうして自分と向き合う事ができたのはあなたのお陰です。もしあなたがいなければ、私は死ぬ理由もわからないまま、突発的に死のうとしたことでしょう。でも私はどうして私を殺さなければならないのか、しっかりと理解し納得したので、なんだかすっきりとした気持ちで殺されることができます。

 私の美しい金髪の乙女よ、ありがとう。

 ああ、私のこの言葉が、世界中の誰にも届きませんように。
 どうか永遠に見つかりませんように。
 どうか、私の滑稽で弱い大切な強さが、誰かに踏みにじられませんように。

 ヴォルフィード、私は英雄ではありませんでした。本当の私は、市場の生ゴミの中に捨てられた、新鮮な死んだ子豚のようなただの子供でした。ただの淋しい目をした、捨てられた子供でした。

 外は今日も曇りでした。きっと明日も曇りでしょう。
 それでは、おやすみなさい。ヴォルフィード。



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