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「どうかしたんですか、総隊長。今、かなりすごいことになってます」

 エスラールがサイシャーンに駆け寄ったが、サイシャーンは上のエメザレに呼びかけた。

「こちらもかなりすごいことになっている。今、総監に呼び出されたんだが、反王家勢力がエメザレとはどういうことだ? 説明せよ、と命令がくだった。私と一緒に来てくれ」
「無理です」

 エメザレはそう言い放った。梯子から降りてくる気配はない。

「マジかよ」
「なぜ無理なんだね。呼んでいるのは総監だぞ」

 さすがのサイシャーンもその台詞に驚いたらしい。表情はほぼ変わらなかったが、目元の筋肉がぴくっと動いた。

「もう少しで事件の謎が解けます。説明すると長くなりますが、この図書室のどこかに、おそらくダルテス文学の棚にサディーレの日記帳があります。それさえ見つけられれば、事件は解決します。今日一日でなんとか探し出し、明日総監のところへ持っていきます。その時に全てお話します。だから明日まで待ってください。先輩、お願いします。そう総監に伝えてもらえませんか」

 エメザレはサイシャーンの顔を真っ直ぐに見つめている。サイシャーンもエメザレの顔を見つめる。まるでお互いがお互いを確かめ合っているように、見詰め合っていた。そこに一体、どのような心理がめぐらされているのか、エスラールには全く見当が付かない。

「なんとかしよう」
 サイシャーンが頷いた。
「あと、いくつかお願いがあります」
「なんだね」

「今日は図書室を開けたままにするように頼んでください。あと一つ、サディーレの中間調査の順位をきいてきてください」

 上の方からものを言うエメザレはなんだか偉そうに見える。

「まったく、きみは人使いが荒いな」

 サイシャーンはこめかみを掻くと、エスラールの肩をぽんと叩き、軽やかに、それでいて優雅に走り去った。



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