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「意気込みはご立派だ。だけど世の中にはやってできる奴とそうでないのがいるんだよ。俺たちは駄目な奴なんだ。それに無駄だ。死ぬ気でも勝てないし、勝たなきゃ話なんてきいてくれない」

「じゃあもう俺が直談判してきてやるよ! 犠牲者になりたくないんだろ? 嫌だったら戦えよ!」

 エスラールはフェオの肩を掴んで揺さぶったが、フェオは迷惑そうな顔をしてエスラールの手をどかした。

「バカ言うなよ。いくらお前が強くったって、一対二十三じゃ勝ち目ないだろう。俺たちはどう考えても戦力外だしさ」

「僕も行くから二対二十三だよ」

 傍観気味だったエメザレが、閑古な湖に小石を投げるように入ってきた。

「……エメザレ」

 それがすごく救いのように聞こえて、エスラールの荒ぶる心意気はますます高まった。

「だから二対二十三でも無理だって。諦めろよ」

「でもさ、エメザレは一度シマ先輩に勝ってるよ。もしかしたらいけるんじゃない?」

 フェオの声の後ろから、優しすぎる顔の男が言った。

「勝算ならあるよ。君たちが協力してくれればの話だけど」

「勝算? 本当に?」

 彼らは最後の希望にでもしがみつくような顔でエメザレを見ている。エスラールもエメザレを見つめて言葉を待った。

「あるよ。ロイヤルファミリーに勝つのは無理だけど、シマ先輩だけなら倒せるかもしれない。王家を黙らせるには王様の首を捕ればいいのさ」

「なるほど。それならいけそうじゃん」

 エスラールはもう勝ったような気でフェオに笑いかけたが、フェオの表情は硬かった。



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