4/9


「どういう風の吹き回しだよ?」

「うーん。端折って話すと昔々に僕を好きだって言ってくれたお礼かな」

「なんだよ、それ」

 フェオは納得できないというように僅かに首を傾げたが、それでも話し出した。

「ユドはペン入れ落としたって言ってたなぁ。なんでも大切などんぐりが入ったペン入れだって」

「どんぐり、か」

 エメザレが小さく言った。

「うん、サディーレが持ってるみたいだから、取りに行ってくるって。俺がついてってやろうかって聞いたら、いいって断って、一人で行ったんだ。いつもなら頼むよぅとか言うのにさ。そういえばあいつ、なんかこの頃変だったな。自暴自棄というか。たぶんもう死ぬんだと思ってたんだろうな」

「なんで死ぬんだよ。病気か?」

 エスラールが言うとフェオは首を振った。

「違うよ。遠征さ」

「死ぬわけないだろうが。俺たちは後方部隊だぞ。相当の間抜けでもなきゃ死ぬわけが……あ」

 言っている途中で気がついた。そう、ユドは最弱なのだ。相当の間抜けに該当する。場の全員はエスラールの沈黙に無言で深く頷いた。

「普通は後方の配置じゃ死なない。でもユドは自分で死ぬって思い込んでたんだろうな。この間、ロイヤルファミリーに対抗する策を考えないかって言い出して、そんな組織を作ろうって俺たちのこと誘ってきたんだ。死ぬ前に、なにかしたかったのかもな。だから俺は犯人はユドであってるんじゃないかって気がする。あいつ一人でそれを実行したんじゃないかと思う」

「その組織って反王家勢力か?」

 エスラールが聞くとフェオは驚いた顔をした。

「そうだよ。知ってたのか」


- 154 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む


モドルTOP