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「今は殴られてこんなんだけど、元の顔はそこまで不細工じゃないよ。シマ先輩だって顔の傷がなければ顔立ち自体は悪くなかった」

「どうせ俺の顔はキングオブ凡だよ。悪かったな。あと俺は彼氏じゃなくて、エメザレのルームメイトでエスラール」

「あれ、エスラールってきいたことあるな。お前、一号隊で結構強いんじゃなかったっけ。へぇ、エメザレと同じ部屋になったのか」

 どうやらこの目元の涼しい男がリーダー格であるようだ。一番堂々としているし、度胸がありそうだ。ミレーゼンのように美しくもなければ、月の男のように個性的でもないが、その他の面々の冴えないという言葉を正確に表したような顔ぶれの中では、はっきりと目立つ存在だった。

「俺のこと知ってるなんて驚いた」

「強い奴を知っておくに越したことはないからなぁ。そういえばエメザレ、犠牲者やめたんだって?」

「ああ、うん」

 男の問いにエメザレが頷くと、一気に場の雰囲気が沈みこんだ。

「たぶん、犠牲者の一人は、俺たちの中の誰かが選ばれるだろうな」
「恐いよ」

 震えるような呟きが聞こえた。呟いたのはひどいタレ目で、ものすごく優しそうで弱そうな顔をした男だった。野良猫に睨まれただけでも本気で震え上がっていそうな顔だ。美形というのとは少し違うが、小動物のような可愛らしさがある。犠牲者がどういう選考基準なのかは定かでないが、彼が最も危ないような気がした。

「フェオ、僕はユドが犯人だと思ってない。それを証明してユドを助けたいんだ。ユドは君たちの仲間でしょう? 事件を起こす前のユドの様子をきかせてくれない?」

 エメザレの言葉に彼らは控えめにざわめいた。



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