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「ごめんごめん。反王家勢力のことは朝言おうと思ったんだよ。それにもう隠してることはないよ。あれが僕の切り札だったんだ」 

「ねえ、今思ったんだけどさ、犯人ヤミじゃない?」

 唐突に思ったので、エスラールは唐突に言った。

「違うと思うよ」

 エメザレは断言したが、エスラールはひらめいたことを一応言いたかった。

「だってさ、サディーレが部屋に戻ってから、ユドが来るまで三十分あって、その間に殺されたってことだろ。部屋に入ることができたのはヤミしかいないじゃないか。それに、サディーレには劣るとはいえ、ヤミは弱いわけじゃないんでしょう。動機だって、隣人トラブルとか有り得そうじゃん」

「最初は、ユドより月男くんのほうが疑われてたんだよ。僕もそれは考えたけど、長椅子に座っている月男くんをみんな目撃してるんだよね。月男くんは長椅子から動いてないんだ」

「じゃあ犯人誰なんだよ!」
 エスラールは立ち止まってわめいた。
「それがわかったら苦労しないよ」
 困ったような顔をして振り向き、エメザレはもっともなことを言った。
「これからどうするんだよ」

「とりあえずユドが属していたグループに話を聞きにいく。後はサディーレの子分に。そこで日記帳の手掛かりが見つからなかったら、僕もどうすればいいかわからない」

 エメザレが大きなため息をついた。エスラールはそんなエメザレの顔を見ていたが、背後からやってくる人物に気付いて、一瞬呼吸するのを忘れた。

「シマ先輩」

 エスラールの台詞を聞いたエメザレの顔色が変わった。




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