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「はぁ!? 俺、聞いてないんだけど」
「うん。言ってないからね」

 エスラールが叫ぶとエメザレは涼しい顔でそう答えた。

「言えよ!」
「それは本当ですか?」

 エスラールが突っ込むのとほぼ同時に、月の男が食いついてきた。

「本当だよ。話をきかせてくれたら教えてあげる」
 食いついてきた月の男を見て、エメザレはちょっと悪な顔をした。

「なぜ、お前が反王家勢力のことを知っているのですか?」
「僕は事件が起きる少し前にユドと話をしているんだ。その時は気付かなかったけど、改めて思い返してみたら、反王家勢力のことを言っていたんだと気が付いた」

「だから、早く言えよ……」
 エスラールは悲しみと怒りを噛みしめて言った。

「わかった。聞きたいこととはなんです?」

 月の男は覚悟を決めたように浅く息をつくと、腕を組んで聞いた。

「君はサディーレの遺留品を見ることができたよね? 遺留品の中に、サディーレの日記帳がなかった?」

「日記帳? いや、そんなものはありませんでしたよ。なんですか日記帳って」



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