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「メルベロットは、本当に綺麗だった。女の子みたいだった。僕もあんな顔に生まれてきたかったな」

「エメザレでもそんなこと思うんだ」

 なんだか意外だ。エメザレは誰がどこから見ても美しいし、並な顔立ちのエスラールからしてみれば、それ以上を望む必要はどこにもないように思えた。というか、エメザレの顔立ちで納得しないとなると、自分の顔はどれだけ不細工に見えているんだろうかと心配になった。

「僕は自分の顔が嫌いなんだよ。男っぽいから」

「そう? とくに男っぽい感じはしないよ。でもいいじゃん。男っぽくても。エメザレ男なんだし」

 エスラールはエメザレの顔をしげしげと眺めてから言った。どういうのが女っぽいのか、女の顔を間近で見たことがないエスラールにはわからなかったが、エメザレの顔が男っぽいとは思わなかった。少なくとも男性と形容するのには違和感がある。顔も身体もまだまだ大人には程遠い。肌もつやつやしていて、全体的に繊細な印象で、始まったばかりの朝のように瑞々しい。美しい少年という言葉がやはり一番相応しい。

 これから、大人になり男性になるわけだが、この輝かしい容姿が衰えるのはずっと先のことだ。きっと美しい青年になるだろうし、壮年になってもその頃の片鱗はどこかに残るはずだ。男っぽくなったからといって、基本的な造形が変わるわけではない。

「そうだよね。僕もそう思うよ」

 エメザレは哀しそうに笑った。



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