4/8


 確かに不思議だ。ガルデンでは手に入るものがかなり限られている。ガルデンから与えられるものは基本的には平等で同じものであり、そのほとんどは必需品だ。特別な所有物は、捨てられる時に親が持たせてくれた忘れ形見を持っている奴がいる、というくらいで、普通は皆同じものしか持っていない。

「ああ、あの日記帳は、一年だか前にボラビン河に遠征行ったとき、活躍したってことで功労の品として現地の指揮官から貰ったのさ。指揮官の息子を偶然助けたんだ。あいつにとっては誇りの日記帳だっただろうな」

「そんなことあるのか」

 自分だけが持っている品というのは、憧れる。エスラールは少し羨ましかった。

「あるさ。後期部隊になれば結構色々貰えるって聞いたぞ」
「あとはなにか知ってることは?」

 エメザレは問い詰めるような口調で言った。

「知ってることっつってもなぁ。事件の日に図書室にいたところを見たが、あいつはほとんど毎日図書室にいるしな。あとは成績が良くなかったってことくらいだ」

「うん。いつもすれすれの成績でロイヤルファミリーに入ってたよね。あれ、わざとじゃなかったんだね。わざとだって、ことあるごとにアピールしてたけど」

「本気じゃないアピールはあいつの十八番だ」

 ミレーゼンは鼻で笑った。

「もしユドが犯人でないなら、サディーレを殺したのは誰だと思う?」

 エメザレが問うと、ミレーゼンは考え込むように押し黙り、しばらくして口を開いた。

「わからない。思い当たらない。確かに奴の態度は横暴だった。間違っても優しいとは言えなかった。でもそれだけなんだよな。色んな奴らにムカつかれてはいただろうが、誰かに殺意を抱かれるほど大物じゃなかった。だから俺は、殺意とは関係なく殺したんじゃないかと思う。なにか目的があって、そのために殺した」

「その目的とは?」


- 135 -


[*前] | [次#]
しおりを挟む


モドルTOP