7/10 「会ったときから、その瞬間から、たぶん好きだったと思う」 エスラールはもう一度言った。ヴィゼルに対してというより自分に確認していた。 ヴィゼルが信じられないというような、やっぱりというような、複雑な表情をしてしばらく固まり、そしてエスラールの胸から飛び退いた。 「最低だ! もう、エスラールのバカーーーーーっ!」 と言って、ヴィゼルは大量の汁類を撒き散らしながら走っていってしまった。 追いかけたいとは思ったが、殺人事件の解決をないがしろにするわけにはいかないし、お互いしばらく頭を冷やす時間が必要だろう。 「すまぬ。ヴィゼルよ。愛の友よ」 ヴィゼルのことが気になりながらも、エスラールはエメザレの後を追った。 さてエメザレは二号寮のどこへ行ったのか。探すのが大変そうだ、とため息をつきサロンを出ると、そのすぐ脇にエメザレが立っていた。 「待っててくれたのか」 「だって一緒に行くってエスラールが言ったから。それに怒られたくないし」 「話、も、もしかして聞こえてた?」 サロンは広いが、障害物がないので声がよく通る。エスラールは微妙に震えながら聞いた。 [*前] | [次#] しおりを挟む モドルTOP |