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「ちょっと待て、もちろん俺も一緒に行くぞ」

 エスラールが言うと、エメザレは立ち止まり、振り返った。

「最後にもう一度だけ聞くよ。僕と一緒に行動することが、どういうことかわかってるんだよね。それでも本当に僕と一緒に来るの? 後悔しても、ごめんねくらいしか言えないよ?」

 訓練場から一号寮へ向かうひとの群れの中で立ち止まり、向かい合う二人は目立っている。ちらちらと向けられる視線に気付きつつもエスラールはエメザレの顔から目を逸らさなかった。

「わかってるよ。大丈夫、俺は構わないから。それより早く事件解決させよう。ユド、助けるんだろう」

 エスラールが笑うと、「うん」と言ってエメザレは少し恥かしそうに微笑んだ。



「だけど強行スケジュールすぎないか。今日中に解決って本当にできるの?」

 小走りで二号寮に向かいながらエスラールは聞いた。

「僕の思い描いてる推測が大幅に外れてなければ、ね」

「その推測、教えてよ。俺、ものすごい置いてきぼり食らってる気がするんだけど」

「いや、推測といっても、誰にどの質問をすれば事件を解くヒントになる回答を得られるだろう、ってことで――」

 と言いかけたところで、エメザレが急に立ち止まった。偶然にも一号寮サロンのど真ん中だ。

「よおエメザレ」

 ものすごく嫌な声がした。バファリソンだ。そういえば一号隊にはそんな奴がいた。ロイヤルファミリーの濃さで存在感が薄れていたが、一号隊にもバファリソンのグループがいたのだ。ついていない。

 バファリソンは子分を数人引き連れ、二人の行く手に立ちはだかる。エスラールは咄嗟にエメザレの前に出て、エメザレを庇った。



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