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「つけてくれたの? ありがとう」

 エメザレはびっくりした顔をして制服を受け取った。それから少し気まずそうにエスラールの制服を差し出した。制服はいつの間にはきちんと畳まれていて、手で丁寧に伸ばしたのか、貸した時よりもパリっとしている。

「昨日、これ着て宴会に行ったけど、ちゃんと始める前に脱いで、汚れないところに置いておいたから、大丈夫だと思うよ。さっき見たらどこも汚れてなかった。だから安心して。それと制服、換えてくれて助かったよ。僕、嬉しかった」

「そっか。よかった」

 エメザレが色々考えてくれていたことが、ちょっと可愛く見えて、エスラールは妙に照れながら制服を受け取った。

「君の制服は素敵だね」

 エメザレはそう言って微笑んだが、エスラールにはエメザレがなにを言いたいのかわからなかった。制服などデザインはどれも同じだし、特別な仕様もない。もしかしてエメザレの制服はサイズが合っていないのだろうかと思った。

 制服に着替え、ブーツを履いていると、二〇ニ号室のドアを叩く音がした。ノックするということは、おそらくサイシャーンだろう。うまくごまかせるだろうか。エスラールに緊張が走った。

「先輩、おはようございます」

 エメザレがドアに向かって言うと、ドアは静かに開き、サイシャーンがお馴染みの鉄面皮で入ってきた。

「おはよう」

 と言ったサイシャーンの前にエメザレが立ちはだかった。サイシャーンがエスラールの近くへ行くのを微妙に阻止しているらしい。

「なにか、その、報告することはあるか」

 サイシャーンはエスラールに聞きたかったのだろうが、エメザレがそこに立っているので、仕方なくといった感じでエメザレに聞いた。



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