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「ほえ」

 少々意外な理由にエスラールはぽかんとしたが、その考え自体は素晴らしい。なんだかエメザレがかっこよく見えた。

「ん? でもなんで犯人を見つけるために、ロイヤルファミリーを辞める必要があるの?」

「ロイヤルファミリーは、いや多分、二号隊全員だろうけど、みんなユドは犯人じゃないと思ってる。当初ロイヤルファミリーで犯人探しをしようという流れがあったんだ。でも総監側がユドを犯人ということにして、事件を収拾させたがっていることと、僕が突然に転属になったことで、思っているほど単純な事件じゃないと察した。下手に首を突っ込むとやっかいなことになるかもしれない。それでシマ先輩はこの事件に関して、勝手な捜査や推論や推理を一切禁止にしたんだ。僕がロイヤルファミリーである限り、なにかしようとすれば邪魔が入る」

「でもさ、ロイヤルファミリーを辞めても邪魔しようとすれば邪魔できるじゃん……」

「いいや。僕はもう完全に一号隊になったから、ロイヤルファミリーは決定的な理由がない限り、僕に手出しできない。ロイヤルファミリーと二号隊はものすごく細かいルールに縛られているんだ。ロイヤルファミリーは理由なく暴力を振るえない。直接けんかを売ったり、昨日みたいに宴会の邪魔したらまた話は別だけど、それは防衛であって、基本的にロイヤルファミリーはルールを破った者に制裁を加える権利を持っているだけなんだ。僕はもうルールの適用外だ。いくらルールを破っても制裁は加えられない」

 エメザレは自信たっぷりに言った。
 エスラールは、ロイヤルファミリーが理不尽な暴力や恐怖で二号隊を支配しているのだと想像していたが、どうも違うようだ。ルールがどのようなものであれ、ロイヤルファミリーの立場は例えるなら法の番人であり、同時に制裁機関でもあるということらしい。しかしルールを作って従うならば、どうせならもっとみんなが納得できるような、できれば幸せになれるようなルールを考えればいいものを、誰が最初にそんなルールを作ったのだろうかとエスラールは不思議に思った。



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