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「助けようとか、一緒に協力してなんとかしようとか、思わなかったのかよ」
「そういう気持ちとは全然別だ。こっちは自分のことで手一杯なんだよ。あんたにはわかんないかな、そういうの。あんたは強そうだもんな」

 理解してもらえないだろうと思っているのだろうか。ミレベンゼは諦めたように息を吐いて言ってから、最後に鼻で笑った。

「俺だって結構手一杯だぞ。この顔面見ろよ」
「本当にひどい面だな。あんた」

 失礼なことに、ミレベンゼはエスラールの顔を見て噴出した。

「笑うなよ」
「悪い悪い。じゃ、今度こそ帰るよ」
「教えてくれてありがとう。お前、案外いい奴だな」
「俺はあんたのそういうキモイところが嫌いだ」

 ミレベンゼは減らず口を叩いて、にんまり笑うと帰っていった。
 部屋に戻るとエスラールはベッドにダイブした。もうくたくただ。
 急速に薄れいく意識の中で、エメザレに黙って過去をほじくってしまったのは、いけなかったと思った。本人に直接聞けばよかったと少し後悔した。



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